家が建つことになる土地を見ると、誰もが家を建てるのは不可能だと思うでしょう。東京の都心を流れる善福寺川のそばに土地はあります。川がなだらかにカーブを描くところにある土地は、川と通りに挟まれた3角形の形。それも緩やかな3角形ではなく鋭い形をしており、横幅はほとんどありません。そのため従来のような4角形の家は建てることは不可能で、土地の形に合わせた家しか建てることができないようになっています。
今回このような土地に建てられたのは「川に寄り添う家(堀ノ内の住宅 )」。その形は土地に合わせたものとなっていて人目を引きます。家は2階建てで、1階には白色の外壁、2階にはガルバリウム鋼板の茶色の外壁となっています。そんなツートンカラーの家にある三角形の先端部分は、1階よりも2階部分が大きいため、まるで船の船首のように見えるでしょう。そしてその先端部分の幅の狭さは、人が住める空間とは思えないかもしれません。
そんな空間の1階にあるのは寝室。そこには玄関もあるため、寝室を狭くすることなく、プライバシーを守る必要があります。そこで考えられたのは寝室と玄関をレースのカーテンで仕切ること。カーテンは開け閉め可能なため、状況によって空間を区切ることができます。通常はカーテンを開けた状態にして開放感を感じることができます。来客などがあればカーテンを閉めてプライバシーを守ることができるようになっているのです。
2階部分にあるのはキッチン、リビングルーム、ダイニングルームなど。そんな多くの機能が集まる空間も、建物の小ささを感じさせないように工夫されています。通りや川に面する両側の壁には大きなガラス窓が取り付けられており、視界を遮ることはありません。そのため壁が生み出す圧迫感がなく、実際の空間よりも家の大きさは広く感じられるでしょう。また同時に家の中が明るくなるため、薄暗さを感じることがない心地よい暮らしが可能となっているのです。
このような小さな家で重要なのは天井の高さ。建物は2階建てだが、屋根が高くなっており、広い屋根裏が生まれています。その一部はロフトとして使われ、活用できる空間を増やしています。また高い天井が果たすのは吹き抜けの役割。実際には狭い空間に高さをもたらして、家に広がりを生み出します。その空間には、両側の壁や、天井に取り付けられた天窓から明かりが注ぎ込み、明るく広がりが感じられる空間となっているのです。
狭小住宅となると、建物の形が制限されて暮らしも制限されてしまう。そのため心地良いものにするには多くの工夫が必要となります。ここでは、自由に仕切ることができるレースのカーテン、広がりを感じさせるガラス窓と高い天井、そして明るさを生み出す天窓や大きなガラス窓で、建物に心地良さと開放感を生み出しています。そんな圧迫感も暗さも感じさせない狭小住宅では生活は制限されることなく、普通の家以上に素晴らしい暮らしが送れるに違いありません。