移築再生で生まれたそば処「芦屋川むら玄」

Michiko JUTO Michiko JUTO
芦屋川むら玄, 株式会社 小林恒建築研究所 株式会社 小林恒建築研究所 منازل
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交通の便が少々悪くても、ドライブに行きたい店があるでしょう。それが飲食店であれば、もちろん味の評判を期待して行くかもしれません。それだけでなく、その店のロケーションや佇まいも十分に魅力的であることが重要でしょう。そんな是非行ってみたい店が小林恒建築研究所が手がけたそば処「芦屋川むら玄」です。今回は店舗併用住宅プロジェクトの、店舗部分をじっくり紹介したいと思います。

山の中の店舗付住宅と工房

緑豊かな自然に囲まれた清流に突出する敷地に2棟の建物から構成されています。前面道路から向って右側が住宅を2階部分に設けた店舗で、左側が工房を含む建物。一見古民家のような外観ですが、ガルバニウム鋼板の屋根がモダンかつ軽やかな雰囲気を与えています。サビ石を積んだ外構に沿って入り口へ。

ガラスの箱が作り出すドラマチックな演出

前面道路から緩やかなスロープを進むと、2つの棟の間のスリッットに挿入されたガラスの箱に辿り着きます。そして独立した2棟の低層建物への入り口へと続きます。全体的に木造の日本建築を思わせる建物とは対照的に無機質な鉄骨のフレームで構成されるこのガラスの通路は、その透明性によって空間の移動の際の外部環境との対話をきっとドラマチックに演出してくれるのでしょう。

新旧の融合

店舗部分に使用されている木造の駆体は、元々琵琶湖のほとりに建っていた酒蔵を移築したもの。大規模な修繕の末この酒蔵は芦屋川の上流で、蕎麦屋として蘇りました。この移築部分は土壁の大壁造りで、外壁には希少な杉材の下見張りを採用しています。一方2階部分は真壁作りとし、古民家風な外観をもつ。また所々駆体には新材を補強し、屋根をガルバリウム鋼板で葺くことで軽量化を図っています。新しいものと古いものをうまく組み合わせ、お互いを補うことで意匠性と合理性の均衡が保たれていると言えるでしょう。

木張りの外壁の表情

双子のように佇むもう一棟の建物の外壁も店舗建物と調和するかのように杉板の下見張りで仕上げられています。簓子で押え、かつ落ち着いた色調の塗装を施した外壁は現代ではあまり見られなくなりましたが、その整然とした表情は時を越えた美しさをきちんと表現しています。建物の1階部分は粉ひき場やそば打ち場として使用されており、打ったばかりのそばを堪能できるのではないでしょうか。

景色を切り取る窓と自然を感じる屋外デッキ

新旧の融合は内部空間にも表現されています。古材である太い梁がかかる店舗空間の頭上は吹き抜けのため、より開放的な室内を強調しています。建物全体を軽くし、以前は酒蔵として閉ざされていたであろう空間に最大限の開口部を設けてあります。それによって蕎麦を食しながら、開口部いっぱいに自然の借景をも味わうことできるのです。また一歩屋外デッキに足を踏み出せば、まるで自然の中に中に漂っている感覚に満たされるかもしれませんね。そして深い山間や川の流れを一層身近に感じることができるのでしょう。

古今東西がミックスした設え

暖簾や障子といった和のエレメントがちりばめられていると同時に、設えにイタリア製を起用しているところが何とも乙ですね。 テーブルには桜の古材を利用し、それぞれの異質な要素がぶつかり合うことなく共存しています。まるでこの建物が周囲の自然に寄り添うように。

灯籠のように浮かび上がる空間

やがて夜の帳が降りる頃、周りの山々は徐々に暗闇の中に姿を消し、このそば処だけが、灯籠のように灯りを放ち、「わざわざ」足を運んでくるお客を暖かく迎えてくれるでしょう。梁に取り付けられた照明がテーブルを柔らかに照らし、室内上部はうっすらとした光が浮かび上がっています。

自然と共存するということは、日本では当たり前のことでした。自然の恵みによって美味しい食が得られ、水の美味しいところには美味しいそばがあると言います。自然を乱すことなく佇む新しい命が吹き込まれた日本美あふれる建築空間で食すそばの味は格別なのでしょう。

写真:ナカサ&パートナーズ

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