日本家屋における扉や窓に用いる建具のひとつである障子は、古来より日本家屋独特の仄暗さや陰影の美を演出するものとして日本の建築文化の象徴的な存在でした。そんな障子は格子に組んだ木の枠に細い桟(組子)を組み、その片面に紙を張ったものです。組子によってさまざまなデザインがあります。今回はいろいろなデザインの障子を紹介したいと思います。
こちらは東京を拠点に活動する灯和屋(株式会社シェアスタイル)が手掛けた、山梨県にある小高い丘に建つ住宅です。再建築不可の築35年の物件を古民家風にフルリノベーションされました。アクセントカラーである朱色が美しいこちらの囲炉裏がある客間は、あたたかい灯りを囲んでゆっくりとくつろげる空間となっています。そんな空間をつくっているひとつが障子です。同じマス目のデザインの障子でもマス目の大きさがそれぞれ違うことで、印象が異なりますね。
山の窪地の見渡す限りの広い茶畑の中に建つこちらの住宅は、静岡県を拠点に活動する原 空間工作所が手掛けました。障子越しに入る光は柔らかく、室内に表情豊かな空間を生み出しています。横長のマス目がある障子は横繁障子と言いますが、通常の横繁障子はマス目がもっと細かいです。ですがこちらのようにマス目を大きくすることで、和風すぎず空間に合ったデザインの障子となっています。
こちらは山梨県を拠点に活動する有限会社中村建築事務所が手掛けた住宅のリビングルームです。障子の一部が開閉できるようになっています。このような障子を猫間障子と言います。無垢の木の漆喰による丁寧な仕上げで、室内にいても外のような居心地の良さがある空間となっています。近年ではガラス戸の組み合わせによる断熱効果や紫外線の軽減効果などから、和室だけでなく洋室においても障子が用いられています。
こちらは東京を拠点に活動する内田雄介設計室が手掛けた住宅のダイニングルームです。北面に設けられたトップライトからは1日を通して優しい光が差し込み、漆喰仕上げの壁を照らします。また正面には壁に引き込むことができる障子を設けられています。障子があることで落ち着いた明るさとなりゆったりとした時の流れを感じることができます。このように障子は紙による調湿効果や室内の保温性など優れた性能を持つため、現代では日本家屋だけでなく洋風の住宅にも取り入れられることが増えてきました。
PHOTO: kenji MASUNAGA
100年前に建設されたこちらの古民家を、神奈川県を拠点に活動する【快適健康環境+DESIGN】森建築設計がフルリノベーションされました。こちらのプロジェクトでは多くの木製建具を再利用され、こちらのリビングルームの障子も洗浄し、障子紙を張り替えて再利用されています。左右で異なるデザインの障子で、左側は横額障子、右側は縦額障子と言います。2種類の美しい障子が空間に素敵な変化を与えてくれています。
こちらの独特の障子がある空間は、滋賀県を拠点に活動するFORM/KOICHI KIMURA ARCHITECTSが手掛けました。今までは障子といえば木の幅は統一され縦と横の線のみでしたが、こちらは木の幅を変えることで新しいデザインの障子を生み出されました。見る人の目を楽しませてくれる素敵なデザインの障子となっています。
Photo:Takumi Ota
こちらは兵庫県を拠点に活動する(株)ハウスインフォが手掛けました。光と影が織り成す芸術的な美をもつこちらの障子は、欄間の透かし彫りとも合わせて何とも言えない雰囲気を醸し出しています。また細かな障子の組子のデザインや欄間の透かし彫りが、日本の美を感じさせてくれる素敵な空間ですね。
写真:中村写真工房
こちらは埼玉県を拠点に活動する遠藤浩建築設計事務所が手掛けた、全て障子で仕切る家です。空間を仕切る建具は全て障子で作られています。そうすることでほんわかとした優しい空間を創り出されています。また障子を開けるとこちらのリビングルームに取り付いたすべての部屋がひとつながりになり、開放的な空間へとなります。閉じても障子がつくりだす柔らかな雰囲気で圧迫感を感じることはありません。そして障子は光だけでなく音も通すので、閉じたままでも家族の気配を感じることができます。